いつか、がんになるかもしれない。
そんな漠然とした不安が、私にはずっとありました。だから病気がわかる2〜3年前に、保険を見直していました。まさか、こんなに早く自分の番がくるとは思っていませんでしたけれど。
胃がんの治療は、長くて高いというイメージがありました。でも、実際にいくらかかるのかは、調べてもよくわかりませんでした。
手術から5年たった今、当時つけていた記録が手元に残っています。病気がわかってから抗がん剤治療が終わるまでの約1年間、何にいくら払って、どんな制度に支えられたのか。そのまま公開します。
これから治療を受ける方の中にも、同じ不安を抱えている方がいると思います。私の体験が、少しでもお役に立てたらうれしいです。
・発覚から抗がん剤治療が終わるまでの約1年で、かかったお金は約71万円(医療費は約45万円、ウィッグなどが約26万円)
・高額療養費と傷病手当金があって、思っていたよりなんとかなった
・いちばん心細かったのは、お金が入ってくるまでの最初の2か月

治療費でいくら飛ぶんだろう。働けないのに、生活費はどうなるの。

出ていったけど、支えてくれる制度もあったよ。
この記事は個人の記録です。金額は病気や治療法、加入している保険によって変わります。制度の内容も変わることがあるので、最新の情報はご自身でご確認ください。
1年間でかかった医療費
手術と入院、そのあと続いた抗がん剤の通院まで。手書きのノートに残っていた記録を、そのまままとめました。

入院・手術が約2週間。そのあと、抗がん剤の点滴を術後およそ半年、飲み薬を術後およそ1年続けました。
通院1回あたりでいうと、こんな感じです。
抗がん剤の点滴がある日は、診察と薬を合わせて1回1万3千円〜2万円ほど。3〜4週間に1度のペースで通っていました。CTなどの検査が重なった日は、2万円近くになることもありました。
点滴が終わって飲み薬だけになってからは、1回5千円〜9千円ほど。経過をみるだけの診察なら、数百円〜数千円ですみました。
| 時期 | 病院 | 内容 | 診察・検査 | 薬 | 1回の合計 |
|---|---|---|---|---|---|
| 発覚時 | A病院 | 診察 | 4,500円 | ― | 4,500円 |
| 手術前の検査 | C病院 | 診察 | 20,440円 | 1,960円 | 22,400円 |
| 手術前の検査 | C病院 | 胃カメラ・大腸カメラ | 16,040円 | ― | 16,040円 |
| 手術前の検査 | C病院 | バリウム・歯・栄養 | 5,570円 | ― | 5,570円 |
| 退院後2週 | C病院 | 診察 | 4,310円 | ― | 4,310円 |
| 退院後3週 | C病院 | 抗がん剤(内服) | 2,420円 | 3,410円 | 5,830円 |
| 退院後4週 | C病院 | 診察 | 440円 | 3,390円 | 3,830円 |
| 退院後1か月 | C病院 | 抗がん剤(内服変更) | 910円 | 1,530円 | 2,440円 |
| 退院後1か月 | C病院 | 抗がん剤(点滴)・抗がん剤(内服) | 10,990円 | 3,550円 | 14,540円 |
| 退院後2か月 | C病院 | 診察 | 1,340円 | 790円 | 2,130円 |
| 退院後2か月 | C病院 | 診察 | 330円 | ― | 330円 |
| 退院後2か月 | C病院 | 診察 | 1,340円 | 690円 | 2,030円 |
| 退院後2か月 | C病院 | 診察 | 14,210円 | ― | 14,210円 |
| 退院後2か月 | C病院 | 診察 | 3,670円 | 830円 | 4,500円 |
| 退院後3か月 | C病院 | 抗がん剤(点滴)・抗がん剤(内服) | 10,520円 | 2,790円 | 13,310円 |
| 退院後3か月 | C病院 | 抗がん剤(内服) | 1,340円 | 3,110円 | 4,450円 |
| 退院後3か月 | C病院 | 診察 | 1,120円 | ― | 1,120円 |
| 退院後3か月 | C病院 | 診察 | 3,150円 | 750円 | 3,900円 |
| 退院後4か月 | C病院 | 抗がん剤(点滴)・胸腹CT・抗がん剤(内服) | 14,700円 | 4,910円 | 19,610円 |
| 退院後4か月 | C病院 | 抗がん剤(点滴)・抗がん剤(内服) | 8,110円 | 5,360円 | 13,470円 |
| 退院後5か月 | C病院 | 抗がん剤(点滴)・抗がん剤(内服) | 10,870円 | 5,360円 | 16,230円 |
| 退院後6か月 | C病院 | 抗がん剤(点滴)・抗がん剤(内服) | 12,950円 | 5,360円 | 18,310円 |
| 退院後6か月 | C病院 | かぜ | 1,580円 | ― | 1,580円 |
| 退院後6か月 | C病院 | CT・胃カメラ・採血 | 15,530円 | ― | 15,530円 |
| 退院後7か月 | C病院 | 抗がん剤(内服) | 920円 | 6,940円 | 7,860円 |
| 退院後7か月 | C病院 | 診断書・傷病手当含む | 3,090円 | 750円 | 3,840円 |
| 退院後7か月 | C病院 | 診察 | 3,400円 | 760円 | 4,160円 |
| 退院後8か月 | C病院 | 抗がん剤(内服) | 3,210円 | 5,940円 | 9,150円 |
| 退院後8か月 | C病院 | 抗がん剤(内服) | 2,600円 | 4,840円 | 7,440円 |
| 退院後9か月 | C病院 | 抗がん剤(内服) | 2,330円 | 4,970円 | 7,300円 |
| 退院後9か月 | B病院 | かぜ | 10,930円 | ― | 10,930円 |
| 退院後10か月 | C病院 | かぜ | 3,350円 | 870円 | 4,220円 |
| 退院後10か月 | C病院 | かぜ | 8,630円 | 1,120円 | 9,750円 |
| 退院後10か月 | C病院 | 抗がん剤(内服) | 1,990円 | 5,030円 | 7,020円 |
| 退院後11か月 | C病院 | 抗がん剤(内服) | 4,110円 | 4,820円 | 8,930円 |
| 退院後12か月 | C病院 | 抗がん剤(内服) | 3,810円 | 4,820円 | 8,630円 |
| 通院の合計(36回) | 299,400円 | ||||
入院・手術
| 発覚後すぐ(約1週間) | B病院 | 入院費 | 64,960円 |
| 手術・入院中(約2週間) | C病院 | 入院費 | 70,231円 |
| 手術・入院中(約2週間) | C病院 | 歯科 | 3,140円 |
| 手術・入院中(約2週間) | C病院 | 病理 | 9,150円 |
| 合計 | 147,481円 | ||
ウィッグ・書類代など
| ウィッグ(シャンプーなどを含む) | 223,432円 |
| セカンドオピニオン | 22,000円 |
| 診断書 | 13,160円 |
| 傷病手当の書類代 | 2,476円 |
| 合計 | 261,068円 |
1年間の総合計 707,949円
意外だったのが、ウィッグです。入院・手術の費用より高くなりました。治療そのものではないけれど、外に出るために必要でした。医療費とは別に、こういう出費があることは、私も事前には想像していませんでした。
支えてくれた制度
出ていくお金ばかり書きましたが、戻ってくるお金、入ってくるお金もありました。振り返ってみて、いちばん支えられたのは、保険よりも公的な制度でした。
高額療養費制度
手術や入院にかかる医療費は、本来なら何十万円という金額になります。それが日本では、1か月に支払う金額に上限が決まっていて、その上限までの負担ですみます。上限額は、年齢と収入によって決まります。
どんなに大きな手術をしても、支払いは決まった金額まで。これは本当にすごい仕組みだと思います。海外では、同じ治療で家が買えるほどの請求がくる国もあると聞きます。日本に住んでいると当たり前に感じてしまいますが、病気になって、そのありがたさを実感しました。
手続きは、入院と外来で違いました。
私のときは、入院の前に「限度額適用認定証」というものを申請していたので、窓口での支払いが最初から上限額までですみました。大きな金額を立て替えずにすんだので、助かりました。
外来の分は、そのことを知らずに全額を支払っていました。あとから自分で調べて気づき、協会けんぽに問い合わせて教えてもらい、申請して戻ってきたお金です。もっと良いやり方があったのかもしれません。

申請しないと戻ってこないの?

そう。知らないと、そのままになっちゃうんだよ。
今はマイナ保険証を使えば、認定証の申請をしなくても、窓口での支払いを上限までにおさえられる場合があるようです。上限額そのものも見直しが続いているので、加入している健康保険に一度確認してみてください。
制度の詳しい内容は、厚生労働省の「高額療養費制度を利用される皆さまへ」のページで確認できます。(2026年9月時点の情報です)
傷病手当金
働けない間、給料のおおよそ3分の2が支給されます。私は1年ちょっとの間、受け取りました。収入がゼロにならなかったことで、治療に専念できました。
ひとつ、やってみて初めて知ったことがあります。傷病手当金は、自動では振り込まれません。毎回、医師に申請書を書いてもらう必要があって、そのたびに文書料がかかります。私の場合は1回544円でした。金額は大きくありませんが、これが1年以上続きます。
なお、傷病手当金があるのは、会社の健康保険に入っている人です。自営業やフリーランスの方が入る国民健康保険にはないので、そこは備え方が変わってきます。
いちばん心細かったのは、最初の2か月
記録を見返して、はっきりわかったことがあります。
高額療養費も傷病手当金も、あとから戻ってくる、あとから入ってくるお金だということです。
休職が始まってから、最初の傷病手当金が振り込まれるまで、2か月ほどかかりました。その間も入院費や検査代は出ていき、この時期だけで20万円ほどかかっています。
収入が止まって、支出だけが続く2か月。ここがいちばん心細い時期でした。
そのとき助かったのが、家族や親戚、職場の方からいただいたお見舞いです。ちょうどこの空白を埋めてくれる形になりました。

制度があるなら、なんとかなるんじゃないの?

なんとかなる。でも、入ってくるまでに時間がかかるんだよ。
がんと診断された時点で受け取れる保険金も、この時期に心強いものでした。私は、がんと診断されたら100万円が支払われる保険に入っていました。外来での抗がん剤治療は、入院の保険では出ません。それでも、このお金があるという安心感が、治療の間ずっと支えになりました。
保険については、今も迷っています
病気になる前は、保険を手厚くしておくことが安心だと思っていました。見直しのときも、入院の保障期間を長めに設定しました。
でも実際には、入院は2週間ほど。そのあとは、ずっと外来に通いながらの治療でした。今の医療では、長く入院することはあまりないのだと、身をもって知りました。あれほど長い入院の保障は、私には必要なかったと思います。
死亡保障も、お葬式代のつもりで200万円を備えていました。でも、ある程度の貯金があれば、毎月高い保険料を払ってまで備えなくてもよかったのかもしれない、と今は感じています。
診断で受け取った100万円も、結果を見ると、ほとんど手をつけずに残りました。公的な制度でなんとかなったからです。だとすれば、高い保険料を払い続けるより、その分を貯金しておくという考え方もあると思います。若いうちにがんになる確率は、そう高くありません。
ただ、私の治療費が比較的高くなかったのは、運が良かっただけかもしれません。病気や使う薬によって、治療費は大きく変わると聞きます。もっとかかっていたら、違うことを書いていたと思います。

じゃあ、保険は入らなくていいの?

それは人によるよ。だから一度、確かめておくといいんだ。
ひとつだけ確かなのは、私の備えが偶然ではなかったということです。「いつかがんになるかもしれない」という不安があったから、2〜3年前に保険を見直していました。そのとき「がんになったらお金が心配だ」と相談して、内容を整えていたのです。がんになると保険料の支払いが免除になる特約にも、そのとき入りました。おかげで今も、保険料を払っているのは1つだけで、保障は続いています。
もしあのとき見直していなかったら、必要なものが足りないまま、あるいは払いすぎたまま病気になっていたと思います。
まとめ
・発覚から約1年でかかったお金は約71万円。そのうち医療費は約45万円で、ウィッグなど治療以外の出費もあった
・高額療養費と傷病手当金で、思っていたよりなんとかなった
・高額療養費も傷病手当金も、申請しないと受け取れない
・お金が入ってくるまでに2か月ほどかかる。手元のお金は少し必要
・長い入院の保障や大きな死亡保障は、私には必要なかった
保険をたくさんかけることを、すすめたいわけではありません。むしろ、公的な支えを知ったうえで、足りない分だけを確認しておくのがいいと思っています。
見直してみると、減らせる保険が見つかることもあります。元気なうちに一度確認しておくと、「たまたま助かった」ではなく、自分で選んだ備えになります。

